webサイト制作コンペは難しい。指名される価値構築を急ぐべし。【制作会社視点】
web制作会社でプロデューサーを8年しています。
その中で数々のコンペに招待いただき、提案書を書いたりプレゼンをしたりしてきました。
コンペというのは、制作を依頼したい企業が、制作会社選定のために、複数の制作会社にお声掛けされ、声がけした複数社から提案をもらった上で、依頼する1社を選定する手法のことです。
今回は、制作会社視点でこのコンペ対応の難しさについて書いてみようと思います。
webサイト制作のコンペの提案準備は大変。
web制作会社でweb制作に携わっていると、様々なクライアントからいろんなきっかけで相談をもらいます。
クライアント視点で考えた場合、ダイレクトに課題の解決法を持っているサービス会社を見つけられれば、そこに迷わず発注という流れが多いはずです。
しかし、web制作においては、「コンペ」という形態を取られることが多く、正直これは、web制作会社の利益を圧迫する1つの要因になっています。
よくドラマなので、イケてる女上司と若めの部下のやりとりで、
「プレゼン資料の準備ばっちり?」
「ハイ!!」
みたいなやりとりがあって、受注となったら
「頑張ったわね!」
みたいな微笑ましいシーンを想像される方もいるかもしれません。
しかし、web制作の場合は、そのコンペにかける労力が大きすぎて、そこで結構なコストを持っていかれてしまい、疲弊の原因の1つになりがちというのが現実問題としてあるのですよね。
ブラッシュアップを継続し、勝ちパターンを構築できればそれが一番とも思うのですが、、実際はクライアント企業ごとにあわせた個別の提案を求められます。
サイト構造の整理も、デザイン制作も求められることが多いです。
コンペの競合企業数のことも気になることの1つ。
3社コンペです、ということなら参加する気にもなるのですが、たまに10社コンペというようなケースもありますからね。。。
大規模案件であれば、参加を検討することもあります。
しかし、そういう規模のコンペは提案では求められる要素も多く、それはそれで大変という。。
仮に提案までの期間が3週間として、そのコンペに関わる工数として、提案資料作成者10人日、デザイナー5日、webマーケティングコンサルタントが5日関わるとしたら、トータル20人日。
仮に1人日のコストを5万円と計算すると、5万円x20日で100万円ものコストになってしまいます。
それでコンペが受注できれば、まだいいのですが、失注となれば、それは単なる外に出ていくだけの無駄コストになってしまうということです。
どの業種の企業においても、競合の上コンペになるという状況はあるということは認識しつつも、割に合わないと感じることは確かですね・・・。
webサイト制作のコンペで重視すべきは、プロジェクトの継続性。
コンペはweb制作会社にとっては、それなりにしんどいもの。
私のようなwebプロデューサーがそこで考えるべき大事なことは、そのプロジェクトを受注し、納品・公開まで持っていった後、そのプロジェクトの継続性、継続発注をいただけるかどうか。
保守契約を結べるか、継続的にwebサイトの改善、改修などを継続していく意思があるか。
というのは1つのポイントかなと思っています。
そういう保守契約的なものがあれば、「リニューアルして終わり」ではなく、長期的な視点で、そのクライアント企業と関わりを持ち、双方でWinWinの関係が築ける可能性が高まるからです。(作ったら終わりの方ベターという考えの制作会社もあるとは思います。)
リニューアルという案件で、仮に利益率が低かったり、マイナスの利益率だったとしても、長い目でみたらプラスになった、という関係性に持っていけるかどうかが、判断の1つになるわけです。
受託型web制作会社のwebサイト制作コンペの難しさと今後の目指すべき道。
そもそも、「コンペにならないように持っていく」ことは可能なのか?
正直そこの明確な答えは持っているわけではありません。
「コーポレートサイトの価値は今後上がるのか、下がるのか」
webサイトに関わる事業そのものの価値、ということも関わってきますし。
多分価値そのものは継続し、企業はそれをより活用しようと動くことは間違いないです。しばらくは。
ただ、webサイトという「情報の入れもの」としての価値はどんどん下がっていくだろうとも思ってます。
それは、web制作に関する技術が成熟し、見た目や機能での差別化を図ることが難しくなっているから。
情報の中身そのもの、SEOやマーケティングに関する技術、ECや情報検索機能など、高度な専門性や技術を要する部分への費用投下価値はありますが、「webサイトという情報の入れ物を作ります、それを綺麗にカッコよく作れます。」というweb制作会社には未来は無いと思います。
そこは、単なるオペレーション扱いになり、どんどん買い叩かれる。
そういう状況にもうとっくになっています。
では、我々は今後どうするべきか。。
個人的には、やはり自社サービス展開の模索は継続すべきだと思っています。
インターネット技術、AI技術はこれからも変わらず進化を遂げていくのは間違いない。
5Gの時代、情報のさらなる高速通信によるクラウド活用、インターネットの枠組みでつながる異業種サービス連携など、技術者不足と言われる日本において、そこの価値はさらに上がる。
web制作会社は、「webサイトを作る」という一次元的なものの見方をするのではなく、「webサービスで、課題を抱えた業種を救う。そのためにこの価値を提供する。」
という価値提供型の企業に転換していく必要があります。
上記に挙げたコンペの話は、その解決の順番が逆になっています。
クライアント企業から、玉虫色の課題を突きつけられ、その解決法を都度検討するという流れ。
そうではなく、「御社の課題をこれで解決しませんか?」
という働きかけをもっとできるようにしないといけないと強く思います。
なんらかのASPサービス提供企業のようにも見えるかもしれませんが、ちょっとニュアンスは違います。
価値の集合体のようなものを、クライアント企業にもっと見せる必要があるんだと思います。
今だったら、
- RPAによるサイトのデータ移行ソリューション
- 商品情報管理のCSVファイルでの一括管理
- Youtubeチャンネル、Youtube広告での集客を見越したコンテンツ作成プラン
- アクセスログ分析ツールの導入とその設定プラン
- 個別の企業の課題やインフラ状況にマッチしたCMS実装プラン
- AI技術を活用した商品レコメンド機能
- AI技術と映像や音声認識技術を組み合わせた、課題解決提案型チャットbot
- Googlemapの店舗情報訴求の最適化
などなど。。。
思いつくようなものをざっと挙げてみました。
「これはうちにしかないですよ。ここはうちの得意のところなので、任せてください。」
というようなことをどれだけ武器として持っておけるかが、フリーのエンジニアとの差別化としてもわかりやすい部分になってくるはずです。
将来的には、さらにその何かを精錬させ、自社サービスとして、サブスクリプション型のサービスとして展開するなど考えてもいいかもしれない。
要は、クライアント企業から、
「その価値が欲しいので、もう御社にお願いするしかないよね。」
っていう状況をいかに作り出せるかが重要なのかなと。
コンペが悪だと言いたいわけではないです。
クライアント企業は、よくわからないweb制作会社に、自社の顔となるwebサイトの制作を丸っと任せていよいか不安なのだから。
その不安を解消させるために、毎回その信頼獲得のための提案をもっていくのが本当に有効なことなのか、web制作会社はもっと考えないといけないと思っている今日この頃です。