「お伺いのマネジメント」はダメ。webディレクターに向いていない人の共通点。
ベースの知識はあるのに、何故か上手くいかない人がいる。
私はwebプロデューサーとして、多くのwebディレクターと関わりながら仕事をしています。
webディレクターには企画が上手な人、お客さんとの関係を作るのがうまい人、などいろんなタイプの人がいるのですが、プロジェクトを任せると、特に炎上とまではいかないのだけど、
「時間がかかり過ぎる。」
「いつも帰宅時間が遅い。」
という人がいます。
その人は、特にweb制作に関する知識不足ということもないし、コミュニケーションが取れない人、とかそういうわけでもありません。
けど、上手くいかない。
なぜ、こういうことが起こるのか、気づいたことがあるので紹介します。
「こちらでよろしいでしょうか?」「どのようにお考えですか?」が多い。
こういう人は共通してお伺いのマネジメントをしていることが多いことに気づきました。
一見、クライアントの意見に真摯に耳を傾けているようだが、実はそうではない。
「こちらでよろしいでしょうか?」
「どのようにお考えですか?」
一見普通の問いかけのように見えるこれらのどこに問題があるのか?
「お伺いのマネジメント」がダメな理由。
それは、まさに職種名webディレクターの「ディレクター」が意味するところを考えれば分かりやすいと思います。
ディレクターとは、言わば現場監督です。
映画の監督
家を建てる棟梁
そういう人は、確かにクライアントの本質的な満足度向上、課題解決のために、
プロとして、意見を聞くし、謙虚な姿勢を持っている。
しかし、いざ、自分が家を建て、映画を撮るとなって現場に立てば、
プロとしてその現場を仕切り、いかに、楽しんでもらえる映画、住みやすい家を作れるかを考えて前に進もうと努力する。
ところが、上手くいかないwebディレクターに話を戻すと、
最初から最後まで「こうするんだ」「こうすべきなんだ」という目ざすべきポイントがおぼろげなことが多い。
そう。「最終形をイメージしながら進んでいない」。
その結果として、クライアントに対し「確認を求める」姿勢が浮かび上がる。
では、一方、その確認を求められたクライアントの立場としてはどのように感じるかを考えてみたい。
相手に与える心理的負担が高いと、スピードが落ちる。
その答えはそのまま「こちらでよろしいでしょうか?」と聞かれたらどう思うかをイメージしてみればいい。
「良い」「悪い」の判断を自分がするんだ。
と感じませんでしたか?
この感覚。。。どうでしょう。
「いやいや。それは普通のことですよ。クライアントのwebサイトを作っているんだし、次のステップに進むためには確認は必要じゃないですか。」
という声が聞こえて来そうだが、常に
「こちらでよろしいでしょうか?」
の問いかけが飛んできたとしたら?
心理的負担が大きいかもな、と感じたのではないかと思います。きっと。
その時クライアントの担当者はどうするか。
「うーん。まぁいいとは思うんだけど、自分だけの判断ではなんともだから、ちょっと他の人にも聞いてみたいなぁ。。」
って思うと思います。
となると、その次、上手くいかないディレクターがどうするか?
「それだと予定が厳しいので困ります。期限は昨日まででしたので、遅くとも今日までに、問題の箇所をご指摘いただいて良いでしょうか?」
と来る。
これはこれで、それを聞いたクライアント側も心理的負担が高いことをイメージできると思います。
ここに書いてある例は、普通によくある話で、このwebディレクターが完全に間違っている訳ではありません。
この進め方で上手くいくケースもあります。
ただ、クライアント側視点で考えた際本当に進めて良いかどうか、迷いが生まれやすい状況というのは想像できるのではないでしょうか。
ではどうするか?「正解を持っておく」ことが必要。
一見この間違っていないようなマネジメント。どうするのが正しいのか?
となるわけですが、結論を先にお伝えすると、
webディレクターが常に「正解」を持っておく。
ということです。
これ、どういうことかと言うと、文字通りではあるのですが、
本当に正しいかどうかはさておき「こうするべき」ということを明確に持っておくわけです。
そして何故そうすべきか、ということの理論武装もしておきます。
その「こっちが正解ですよ。」ということを匂わせつつ、クライアントに判断をしてもらうのです。
あれあれ、じゃあ、先ほどの「お伺いのマネジメントと一緒じゃない?」
と思われるかもしれませんが、そうではありません。
先ほどは
「こちらでよろしいでしょうか?」
という問いかけでしたが、
「こういう理由で私はA案の形にすべきと考えます。別案としてB案もありますが、こちらはこういう点が弱くなるので、弊社としてはA案をお勧めします。」
こんな言い方です。
シンプルにいうと
「こうしましょうよ。」
ってことです。
クライアント視点で考えたとき、この2つの決定的に違う点は、
「制作会社がお勧めしてきたので、A案にした。理由にも納得したし。」
という「クライアントが制作会社に委ねる」関係性になっているところです。
これ本当に重要です。
この進め方で信頼が得られれば、徐々に「任せますね。」という空気感が生まれてきます。
ディレクターは、正解を持ちつつ、そこに持っていくためにどうするか、というマネジメントをすべきです。
クライアントから「いや、私はB案だな。」と言われることもそれはありますよ。
全部が全部こちらの思い通りになるわけではないです。
そうだったとしても、
「私は、A案をこういう理由で良いとお勧めし、B案をお勧めしない理由もお伝えした。にもかかわらず、なぜB案なのか、こちらが気付いていないメリットが別にあるのか?」
という建設的な議論にしやすいので、結果的にB案もしくはまた違う案になるにせよ、比較的早い時間で結論に至りやすい、ということがあります。
大事なことは、ディレクションするのは制作者側だということです。
そうすることで、クライアントが判断する心理的負担を下げられるのだ、ということは是非覚えておいて欲しいポイントです。
これって心理学でよくある話
心理学で「断りにくいデートの誘い方」とかって話ありますよね。
例えば、いいなって思っている異性がいるとして、その人にいきなり「今度デートしてください!」って言うより、「美味しいパスタ屋さん見つけたんだよね。ナポリタンとカルボナーラ美味しいんだって、食べに行こうよ!」みたいな。
あれと似てる話な気もします。
共通しているのは、相手の心理的負担を考えたコミュニケーション、マネジメントを行うということ。
その上で、webディレクターは「理想のデートプランを予め準備しておくべき」ってことです。
webディレクターが持つべき2面性
webディレクターというのは謙虚さと傲慢さの2面性を同時に持っておくべき職種だと思っています。
クライアントの機嫌を損ねることはあってはいけないし、皆がハッピーにならないといけないので、押すこともあれば、引くことだってある。
「前に突き進む傲慢さ」と「クライアント、ユーザー、制作者等、様々な視点の意見を受け止める謙虚さ」その両面が必要です。
webディレクターは、
「どうすればこのサイトに人が集まるのか」
「どうすればこのサイトは使いやすくなるのか」
「どうすればこのサイトから商品が売れるのか」
といったことを分析や経験などを通し、企画・設計する力が求められます。
その際、いずれにせよ「こうすべき」ということは持たざるをえないと思うのです。
上手くいかないwebディレクターは、そこの思い入れやこだわりが薄いのかもしれないですね。。
まとめ
自分は現場監督である。
あるべき形がなんなのかを第三者視点で分析・調査し、追い求める。
これこそがあるべき形というのを定義できたらそれを実現するために、webディレクター側から提案し、リードする。
「先方から伺う」のではなく、見定めたあるべき形を「こちらからお勧めする」。
そうすることで、クライアントは判断しやすくなり、クライアントから「頼ってもらえる関係性」が生まれてくる。
そうなればプロジェクトの進行スピードはぐっと上がってくると思います。
参考になると幸いです。