【体験談】手掌多汗症。手汗と向き合い続けた40年。【手術なし】

たぐと申します。
東京のweb制作会社でプロデューサーをしています。
今回は、webサイトやガジェットとは全く関係ない話をします。
手掌多汗症という病気と私が付き合って40年、という話です。
多くの人には関係ない話だと思いますが、もし手掌多汗症という病気に悩んでいる方がいたら、少しは参考になる話があるかもしれませんのでお付き合いいただけますと幸いです。
目次
手掌多汗症とは?
手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)とはなんでしょうか?
読んで字のごとく、
「手のひらにものすごく多くの発汗がある症状」
です。ほぼ四六時中手のひらに汗をかきます。
多汗症のレベルにも3段階あるようです。
- レベル1:皮膚が軽く湿っている状態。
- レベル2:皮膚に汗が水滴になっているのが見た目でわかる。
- レベル3:汗が水滴になり、したたり落ちる。
つまり何かしら手が湿っていたり、濡れていたりという症状が継続する、ということです。
ポイントは、ほぼすべての時間でそういう状態、ということです。(睡眠時間は例外です。睡眠時間に手汗が出ることはありません。)
このレベルの定義に、常時かどうかの具体的な言及はありませんが、そこにも個人差があるように思います。
激しく緊張したときにレベル3の状態になる、とか。
いつもは軽く湿っている状態だが、高温下ではレベル2になるとか。
そして、手掌多汗症というと手のひらだけに汗をかくように思うと思いますが、実は足の裏にも汗をかきます。
それはまた別の名称があって、足蹠多汗症(そくせきたかんしょう)というらしいです。
この病気、病名で検索すると病院の症例記事とかはみつかりますが、症状を持っている人の記事ってあまり見ませんね。
今回症状を持つ本人である私の体験談として、手掌多汗症と付き合ってきた40年について語ってみようと思います。
もしこの病気で悩んでいる方がいたら、その方の参考になることがあるかもしれません。お付き合いいただけると幸いです。
自分が手掌多汗症だと気づいた時期。
ちなみに2021年2月現在の私の年齢は46歳。
そして、私が手掌多汗症であると認識した年齢がいつであるかというと、実ははっきりしません。おそらく7歳、、小学1年生の頃だったと思います。
そして今、私が「手掌多汗症」であると認識した年齢といいましたが、厳密に言えば、そのとき「手掌多汗症」という病名を認識していたわけではありません。
その病名を認識したのはもっと後、、インターネットが普及した1997年ごろ、23歳頃のことなのではと思います。
つまり、私は7歳とかそれくらいの時期に
「手のひらからすごく汗が出る。出つづける・・・」
という症状に悩まされはしていたものの、それが病気である、という認識をしていなかったわけです。
そこにある感情としては、、「なんで・・・?」
というようなものでした。。
小学校時代。ピアノ教室、野球クラブ、運動会など、すべてがストレスに。
小学校時代は、教室の授業でノートをとったり、友達と遊んだり、体育の時間であったり、手を使っていろんなことをします。
自分の場合、親の意向もあり、野球クラブで野球をしたり、ピアノの教室に通っていたりしました。
私の親、特に父親が厳しい人で、自分の意志で野球やピアノを始めたというより、やらされていた、というのが正直なところです。
つまり、そういう手のひらを存分に使うことが小学校時代は多かったわけです。
正直、小学時代というのは、自分の弱み的なことをあまりオープンにはしたくないもので、基本的にはひた隠しにしていたと思います。
ただ、
- 体育の二人組の準備体操のとき
- 運動会のダンスのとき
- 共用の野球のバットを渡すとき
- 共用の野球のグローブを渡すとき
- 握手を求められるとき
- テストの用紙を回すとき
- 申し込み用紙やテスト、紙に何かを書くとき
- 友達の家でファミコンするとき
- トランプするとき
などで、どうしても気づかれてしまう、という状況はありました。
その際に「うわっ」とか「汚い」とかあからさまに罵られたりしたことはなかったと思います。
とはいえ
「あれ?濡れてるよ。」
というような反応をされることがそれなりに多かったと思います。
その時は、「ごめん、手のひらに汗かいちゃって・・」というようなことを言っていたと思います。ただ、自分から率先して「手のひらに汗かきます。」ということを言う勇気はなかったです。。
手のひらに汗をかくことで、あからさまな虐めを受けたりしたことはないですが、「あれ?濡れてるよ。」という反応をされることは正直辛かったです。
もちろん、その反応は、当たり前、というか、まっとうな反応だと思うのです。
しかし、ひた隠しにしている状況だと、「バレた」とか「見られたくないものを見られた」という意識になってしまったものでした。
そこにあるのは、
「不潔なものと特別視されたくない」
「触られたくないと思われたくない」
というような自分を守る意識が強かったからだと思います。
ここは後述しますが、正直に
「ごめん!手のひらに汗かいちゃうんだよね、オレ!」
って言ってしまった方が楽だったと思うし、その方が、相手に対しても思いやりのある行動だったと思います。
相手の人は「手のひらにすごく汗をかく人がいる」ことを知らないケースがほとんどですからね。
「あれ?濡れてるよ。」という反応があるのはごく自然です。
なので、私の小学校、中学校時代は、
- 手掌多汗症をひた隠しにする。
- バレて不思議な顔をされる。
- 自己嫌悪に陥る
という、悪い循環に陥っていたと思います。
だいたい、手のひらに汗をかくって、汗をかいてる自分自身が不快なんですよ。
汗がでるときに「あ。来る。」って感覚があります。
出るときは本当に「ブワッ」と吹き出る感じですからね。
私が、手掌多汗症のレベル1なのか3なのか分かりませんが、ひどい状況のときは、手のひらから滴り落ちるくらいの汗をかくこともありました。
中・高・大学時代の多感な時期、そして異性には触れられないという想い。
高校、大学時代などは、特に、、どうしても異性というものを意識してしまいます。そして、悲しいことに
「自分は、この症状を持つ限り、異性に触れる事はできないかもしれない。」
とも思っていました。
それは、正直なところ結構なストレスでした。
女性を好きになったりもしますから。
「自分には無理。」
と勝手にあきらめつつ、
「でもネガティブに生きたくない。」
そんな中途半端な感情で揺れ動いていたように思います。
社会人になっても、汗の呪縛からは逃げられず。
汗の症状はありつつも、福岡の大学を卒業してから上京し、日々忙しい毎日を過ごしていました。仕事はパソコンを使うことがメインでした。
この頃申し訳ないなと思ったのは、先輩の人に
「ちょっとパソコン貸してみ。」
と言われてキーボードに触れられたとき、「うわ、なんでこんなに濡れてんの?」みたいなことを言われたときです。
そのときは「すみません・・」って感じなんですが、パソコン仕事であったとしても汗の呪縛から逃れることはできませんでした。
今思えば、こういうのも最初に自分から言っておけば良かったんです。
相手もただ不思議だと思うんですよね。。
ようやく症状を正しく理解。一生付き合うか、手術か。
最初に言った通り、自分の症状が「手掌多汗症」という病気であると認識したのは、本当に社会人になってからというレベルです。
病名を知ったのも、インターネットで調べたからだったのではと思います。
小学生のころに一度皮膚科か何かの病院に行ったことはあるんです。確か。
でも、その時は具体的な病名などは告げられず、
「大人になれば治りますよ。」
という超適当な診断結果だったように思います。
見てもらったところが専門ではなかった可能性は高いですが、少なくともその時に「手掌多汗症」という病名を認識することはできませんでした。
あとになって、インターネットで調べて、それが病気だと分かったことで、少し勇気が出たことを覚えています。
なぜかというと
「これって病気だから。」
と言える、と思えたからです。
それまでは、とにかく謎だったんです。
多汗症だとしても、なんで手のひらからだけこんなに汗が出るのか、自分でも説明がつかず、自分だけが特異体質なのだ、世の中で自分だけが持っている症状なんだ、、って本気で悩んでいたのです。
病気だということは、自分と同じ症状の人がいるんだ、とそのとき初めて思いましたし、病気だということは何か改善法があるのでは、、という希望も持ったと思います。
インターネットというのは偉大ですね。
困った時に世の中の叡智から知識や情報を拝借できるというのは本当にありがたいことです。
そこからインターネットを使って
「手掌多汗症」というキーワードで検索して、情報を探していたと思います。
そのころは、ちょうどGoogleもサービス開始したくらいだったと思いますし、Yahoo!のディレクトリ検索的なところから情報を探していたかもしれません。
ちょっとここは記憶が曖昧ですが、何かしら情報をインターネットに求めていたと思います。
調べた結果、いくつか対策の情報を見つけました。
- イオントフォレーシス治療という謎の電流装置を使う
- オドレミンという制汗剤を毎日塗る
実際試したのはこの2つです。
謎の電流装置というのは、インターネットで海外で販売されていたものを1.5万くらいだったと思いますが、購入して取り寄せたりしました。
効果のほどは定かではないですが、電流が流れる水を湛えた装置に手のひらを突っ込んで15分。これを毎日繰り返す、というようなものです。
ただ、購入した装置があまりにもちゃちく、不織布的なものが装置の中にあるのですがそれの替えがなく、毎回海外から取り寄せとかやっとられんぞ、ということで10回くらい継続した後にやめました。
オドレミンというのは、これはどこかの病院か薬局でもらったと思います。
塗りはするのですが、汗が止まるかというと、クリーム状のものを塗ったくらいでは汗はとまらず、すぐハンカチで手を拭いてしまうので、これは意味ないんじゃない?って思ってやめました。
最終手段として、解決に繋がりそうなのは「手術」でした。
ETS手術という名前のもので、確か
- 全身麻酔をする。
- 脇のところに穴を開ける。
- そこから管状のハサミを通す。
- 交感神経を部分的にカットする。
確かこんな手順だったと思います。
その神経の切り方により、右手、左手別々に発汗を止められるというものでした。
まずは片手を止めてみて、問題なさそうならもう一方の片手も止めてみる、という手順が一般的なようです。
片手だけ汗を止める、というのがサイボーグの回路を焼き切る、みたいな話に聞こえて、ちょっと滑稽に思ったのを覚えています。
ただ、このETS手術、副作用、、と言っていいのかわかりませんが、手のひらからの汗が止まる代わりに、大腿部や、お尻、背中からの汗の量が増大する、という代償性発汗というものがあることがわかり、それはそれで怖い話だなと思いました。
というのも、その代償性発汗の量は、手術をしてみないとわからない、ということだったからです。
自分としては、手のひらの汗を止められるなら、、という思いで、悩んだのですが、その未知の代償性発汗が自分の生活にまた違った形で影を落とすのではないか、、と思い、決断することが出来ませんでした。
異性に触れられないかも的なことは、ずっと思い続けてきたことですが、
生活そのものに支障をきたすということはなかったですし、幼少期ほど、人やモノに触れないといけないことが減っていたことも決断に至らなかった理由と言えると思います。
今の奥さんとの出会いで意識が変わった。
私が、27歳の頃だったと思いますが、今の奥さんと出会い、お付き合いするようになりました。
最初は、ずっと自分の手のひらの汗のことは言えませんでした。
ただ、東京の高井戸にあるファミレスに行ったときだったと思います。
ちょうどその時に勤めていた会社をやめようとしていたときだったと思うのですが、やめることにした経緯、そして今後こういうことを考えている、というを話していて、その流れで、だったと思います。
「実は自分にはこういう症状がある」
そういうこと淡々と話したんですよね。
「それを話したら嫌われる」とまでは思ってなかったですが、
自分から自分の症状を自分の意志で他人に伝えたのはもしかしたらその時が最初だったかもしれません。
確か28歳くらいだったと思うのですが、いい年した大人が、涙目で鼻をグズグズ言わせながら話をした記憶があります。
そしたら彼女は、特に表情を変えることもなく、
「へぇ、そうなんだ。私とか乾燥肌で手がカサカサだから逆に羨ましい。」
そんなことを言われたような気がします。
彼女は、日頃と同じように接してくれ、今後も何も変わらないよ。
そういう態度で接してくれました。
転職を考えていた時期、彼女との今後の将来を考えるべき時期、これまで自ら言わなかった自分の体の症状、そういうことの重なりで私的にはアップアップだったのですが、彼女にしてみたら
「そうなのね。次の職場も頑張ってね。」
そんな感じだったということです。
それは本当にありがたかったし、自分が抱えていたコンプレックスの壁が少なからず崩れた瞬間だったように思います。
今、その時のことを彼女に聞いても
「え、そんなことあったっけ。」
という反応が返ってきそうですが、あえてそれ以降、この日のことは口には出していません。
とにかく・・・なんでしょうね。。。
それを境に、症状についてそこまで過度に気にしたり、隠したりしなくても良いのかもしれない、と思うようになりました。
ただ、手の汗というのは自分自身不快ですし、ましてや手汗が噴出している状態で他人の所有物を触ったり、手汗を気にせず握手したりして良いか、というとそれは違うと思うのです。
そこは、自分から率先して、汗がひどいときは
「すみません、私手汗が酷くて・・・」
という一言を自分から言うようにしています。
そして何よりハンカチですね。
それは絶対に持つようにしています。
今では、10代、20代のころに比べると、多分ですが汗の量は若干減っているように思っています。
今、仕事はweb制作会社でプロデューサーをしていますが、緊張する会議のときなどは変わらず手から汗が噴き出すことはありますし、パソコンのキーボードは今でも濡れますし、症状そのものとの付き合いは続いています。
手掌多汗症の方にお伝えしたいこと。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
もしかしたら、今、手掌多汗症で悩んでいる方もいるかもしれません。
そして、ETS手術に踏み切る方もいるでしょう。
そこは症状のレベルにもよると思うので、手術をすべき・しない方がよいということを私がアドバイスできるものではありません。
ただ、あくまで私の場合ですが、手術をしなくても良かったと思っています。
今でも手掌多汗症に悩まされはしますが、なんとかその症状と付き合っているという感じです。
小学生、中学生の多感な時期の手掌多汗症はそれなりにしんどいこともあると思いますが、ハンカチは持っておいたほうがよいです。
常にハンカチを持っていれば一応なんとかはなります。
あと、ここは難しい判断もあるかもしれませんが、特によく接する人に対しては
「自分めっちゃ手のひらに汗かくんよ、ごめんね!」
って言っておいたほうが楽だと思います。
それで嫌いになったり、去る人がいるならそれは仕方ありません。
今だから言えますがそんなことで嫌いになるくらいならその人はそれだけの人ということで割り切ったほうがスッキリすると思います。
実際それで自分を罵ったり嫌いになる人なんてそうそういませんから安心してください。
私自身がそれを実証済みです。
読んでくださってありがとうございます。
少しでも手掌多汗症に悩む方の参考になれば幸いです。